輸送コストの不思議
- 藤島 廣二
- 2015年5月31日
- 読了時間: 2分
輸送コストは距離が長ければ長いほど高い、と考える人が多い。と言うよりも、そう考えるのが普通であろう。が、これは正しいとも言えるが、正しくないとも言える。
同じ5㌧トラックを使って、同じ量の荷物を50㎞離れたところに運ぶ場合と、500㎞離れたところに運ぶ場合を比較すると、間違いなく500㎞離れたところに運ぶ場合のほうが輸送コストは高い。
しかし、中国の青島港から日本の東京港まで海上コンテナで野菜を運ぶ場合と、九州から東京まで10㌧トラックで野菜を運ぶ場合を比較すると、前者の方が後者の約2倍の距離であるにもかかわらず、1㎏当たり輸送コストは安い。後者の場合、冷蔵機能付きのトラックであれば1㎏当たり30~40円ほどになるのに対し、前者は冷蔵機能付きのリーファー・コンテナであっても1㎏当たり10円前後、高くても15円程度にすぎない(ただし、輸入にかかるトータル・コストとなると、さらに関税や荷役料等が加わるため、この金額の倍程度か、それ以上になる)。
ちなみに、地球の裏側のブラジルから日本まで鉄鉱石を17万㌧のバラ積み船で運ぶと、総運賃(傭船料)は安い時で2億円前後、高い時で4億円程度になるが、1㎏当たりに換算すると驚くことにたった1~2円程度にすぎない。だから、資源のない日本でも銑鉄の製造や精錬ができるのである。
では、なぜ遠い方が近いところよりも安くなるのか。読者の中にはもう気づいた方もいると思うが、実は輸送コストの決定要因として、確かに距離も重要ではあるが、それ以上に重要な要因が存在するのである。上記の例では、それは輸送単位である(これ以外に輸送手段の違いも重要である)。海上コンテナは20フィート・コンテナであろうと40フィート・コンテナであろうと、その中の荷の重量は普通10㌧から20㌧程度にすぎないのであるが、それを青島港から東京港まで運ぶのは数万㌧のコンテナ船である。10㌧対数万㌧という輸送単位の差が、距離の違いからは理解できないような輸送コストの差を生み出したのである。
筆者は今後、日本国内においても輸送コストを縮減するために、10㌧トラック等から20㌧トレーラー等への切り替えをますます進める必要があると考えているが、読者の方々はどのようにお考えであろうか。
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